「はい」


悪びれる様子もなく、読み終わった一条くんが席に座る。


いつも机には出していないだけで、国語以外の教科書はあるらしい。

だけど、国語の教科書は友達に貸したままだというのは、今初めて知った。


でもそのおかげで、たった数日で一条くんと仲よくなれたような気がする。


床のタイル2個分の距離とは言え、教科書の貸し借りがなければ、おそらく話しかけることもなかっただろう。