隣の席の一条くん。

「うん、そうだよ」

「そうだよって…。それに花宮さん、今までにキス…したことある?」

「ない。初めてだから」


キッパリと答えたわたしに対して、一条くんは遠慮がちに体を離した。


「じゃあ、尚更できないっ」

「どうして…?」

「どうしてもなにも、人気アイドルのファーストキスを…俺が奪うわけにはいかない。俺がしなくたって、次のシーンであいつに――」