隣の席の一条くん。

それに対しての一条くんからの返事はない。


気まずさで水面に目を移すと、今にも泣き出しそうなわたしの顔が映っていた。


このまま…このボートに乗って、どこか遠くへ逃げ出せたらいいのに…。


そう思っていた、――そのとき!


ボートが大きく揺れたかと思ったら、わたしは一瞬にして強い力に引き寄せられた。


固いものが顔に当たって驚いて見ると、それは一条くんの胸板だった。