隣の席の一条くん。

「一条くん…!?撮影の時間が――」

「戻りたくないんだろ?だったら、俺の言うこと聞けよ」


いつもなら、わたしの意見を聞いてくれる一条くんだが、なぜか今は強引。


そのまま、案内されたボートに乗り込んだ。


不規則な水面の波に揺られながら、一条くんの漕ぐボートは少しずつ岸から離れていく。


わたしたちがさっきまでいたところはとても遠くに感じて、まるで2人だけの世界へ迷い込むかのよう。