隣の席の一条くん。

「なに言ってんだよ。まだ撮影、残ってるんだろ?」

「…うん」


でも、戻ったらラストシーンを撮らなくちゃいけない。

怜也との…キスシーンを。


憂鬱そうに俯くわたしの手を…一条くんが取った。


「じゃあ、ちょっと俺に時間ちょうだい」

「…え?」


わたしの手を引くなり、駆け足で走った。


どこへ連れて行かれるのかと思ったら、着いた場所は池にあるボート乗り場。