桜庭家のひんやりした玄関で、涼しさのありがたみを感じるより先に、「なにしに来たの」と、鋭い声が飛んできた。唯子様である。
ああ嫌だ、だから来たくなかったんだよ。外は暑いしさ、涼しいここへ辿り着いても、唯子様が怖いしさ。わざわざ玄関を開けてくれたのも怖い。もうそこから怖い。なにか魂胆があるんじゃないかと思ってしまってならない。
「やあやあ、相川さん。待ってたよ」と、唯子の後ろから、唯人君が現れる。途端に、唯子の表情がやわらぐ。
「唯人君……」と彼の名前を呼ぶと、唯子の表情がまた、ピキ、と険しくなる。あたしの唯人に馴れ馴れしくするんじゃないわよ、という怒声が聞こえてくるかのよう。
「健人は?」
「部屋にいるよ」
「またメイド服ですかね」
独り言として呟くと、「健兄、相川さんのメイド服姿、気に入ったみたいだよ」と、唯人君が言った。ぶるり、と体が震える。あいつは一体なにが目的なんだよ――。
唯子がきゅっと、唯人君の服の袖を掴んで、彼は彼女の髪の毛を撫でた。そうすると彼女は、甘えたように兄の腕に身を任せる。――恋人ですか、あなたたちは。いや、別にいいんだけどね。わたしには関係ないし、仲がいいに越したことはないんだし。
ああ嫌だ、だから来たくなかったんだよ。外は暑いしさ、涼しいここへ辿り着いても、唯子様が怖いしさ。わざわざ玄関を開けてくれたのも怖い。もうそこから怖い。なにか魂胆があるんじゃないかと思ってしまってならない。
「やあやあ、相川さん。待ってたよ」と、唯子の後ろから、唯人君が現れる。途端に、唯子の表情がやわらぐ。
「唯人君……」と彼の名前を呼ぶと、唯子の表情がまた、ピキ、と険しくなる。あたしの唯人に馴れ馴れしくするんじゃないわよ、という怒声が聞こえてくるかのよう。
「健人は?」
「部屋にいるよ」
「またメイド服ですかね」
独り言として呟くと、「健兄、相川さんのメイド服姿、気に入ったみたいだよ」と、唯人君が言った。ぶるり、と体が震える。あいつは一体なにが目的なんだよ――。
唯子がきゅっと、唯人君の服の袖を掴んで、彼は彼女の髪の毛を撫でた。そうすると彼女は、甘えたように兄の腕に身を任せる。――恋人ですか、あなたたちは。いや、別にいいんだけどね。わたしには関係ないし、仲がいいに越したことはないんだし。



