「芽衣」

彼の瞳が微かに光ったのが分かる。
そのまま長い腕が伸びてきて引き寄せられそうになった……けれど。
私は彼の胸板に、そっと手を置いた。

「芽衣……?」

(好きって言ったけど、ちゃんと伝えなくちゃ)

後にも先にも、『あの話』を避けては通れない。

(どんな結末が訪れようと、受け入れるしかない……)

私は最後の力を振り絞り、困惑する社長を見つめる。

「私は……結城家具の経営難を助けるために青葉不動産の息子さんと、お見合いをしなければなりません……社長のことが好きですが、家を見捨てることはできないんです」

すべて言い切って、彼の顔を伺い見る。
難しい表情を確認し『あ……ここで終わってしまう』そう、確信したその時……。

「お前の人生を、家のために棒に振るのか?」

(えっ……)

強い瞳に射られ、鼓動が跳ねる。
彼の言葉に戸惑っているうちに、強引に腕を引き寄せられた。

「んっ……!?」