「はぁ……ウチラも来年は受験生か。どうする芽衣?」
「ん~?」

(どうするも何も、ずっとこのままでいいよ?)

そんなことを思うけれど、私はそうも応えず、手に持ったスマホにもう一度視線を戻す。

都内で有数の進学校に通う、私と美晴。
今日も私たちは、ポテトの味が豊富なファストフード店にやって来ていた。
目と鼻の先にある高校には行かずに、いつものようになんでもない時間を過ごす。
そして机の上には散らかった化粧道具と、買ったばかりのファッション誌。


『一位を取りなさい、一位を!!』

一代で税を成した、家具屋の社長であるおじいちゃんの口癖だ。
いくら勉強してもテストでいい順位をとっても、それが一番でないと意味がない。
私は家族からの監視の目が苦痛になり、自分から『優等生』を離脱した。