「朝陽く……ここ、外!」
「……だから、何? もっとしてやろうか?」
「いっ、いいですっ……!」
「ちぇっ。もっとキスしたかったのに、ざんねん……それじゃあ、行こうか? 俺のお姫様?」
朝陽くんが、私に手を差し出す。
「ひ、姫!?」
「はは。みつ、さっきからずーっと顔赤いぞ? ほんと、可愛い奴め。ほら、行くぞ!」
朝陽くんが、私の手を取って繋ぐ。もちろん、恋人繋ぎで。
……朝陽くん、今日はマスクつけてない。
昨日より顔色も、だいぶ良くなったみたい。ずっと気になってたから、良かった。
朝陽くんとしばらく歩いていると、何人もの視線を感じる。
「やだ〜、一之瀬くんが女の子と手繋いでる」
「うそー。もしかして彼女なのかな?」
同じ高校の制服を着た登校中の女子生徒からは、悲鳴にも似た声があがる。
「ねぇ、朝陽くん。 同じ学校の子たちに見られてる」
私が彼女たちの視線に耐えられなくて、繋いでいる手を離そうとすると、離さないとばかりにギュッと力強く握られる。