「俺、古賀さんのことが好きなんだ。俺と、付き合ってください!」


昼休みも残りわずかとなった頃。


『話がある』と、別のクラスの野球部の男子・田中くんに呼ばれて、私は人気のない体育館裏までやってきた。


そして今、私は田中くんに告白された。


「ごっ、ごめんなさい。田中くんの気持ちは、すごく嬉しいんですけど……」


私に差し出してくれている田中くんの右手が、微かに震えている。


せっかく勇気を出して、私に告白してくれてるのに。それを断るのは、すごく心苦しいけど。


「私は、他に好きな人がいるので……本当にごめんなさい」


私は、朝陽くんが好きだから。


「そっか。古賀さん他に好きな人がいるんだ。呼び出してごめんな?」


田中くんは私に軽く会釈すると、落ち込んだ様子で校舎のほうへ、とぼとぼ歩いて行く。


ああ、田中くん。あんなに肩を落として。
なんだか、申し訳なさでいっぱいになる。


「ふぅ……」


私は、どんよりと薄暗い灰色の空を見上げる。


もうすぐ次の授業が始まるし、私も教室に戻ろう。


そう思い、歩きだしたとき……。


「はぁ……。やーっと見つけた」