「はぁ〜っ」


教室に戻った俺は真宙の席で、購買で購入したクリームパンを片手にため息をつく。


「でっけぇため息だな、朝陽。ひょっとしてまた、古賀ちゃん?」


真宙が、俺を見て苦笑いする。



「朝陽、最近ため息ばっかりだけど……古賀ちゃんとも、ほとんど話してないし。お前もしかして、ついにフラれた?」


おいおい。そんな失礼なこと、爽やかな顔で言うなっての。


「真宙! 言っとくけど俺、まだ美月にフラれたわけじゃな……」


いや、この前『朝陽くんなんて嫌い!』って、言われたよな。


思い出して、胸がズキっと痛んだ。


「キャー! 一之瀬くんだ〜」

「かっこいい〜」

「真宙くーん」


真宙に喋っている途中で、開いている教室の扉越しからこちらを見る女子たちの声に遮られた。


いつもながら人のことを見て、キャーキャー騒いで。よく飽きないよな。


美月は、ああいう女子とは違う。


……って、なに美月と比べてるんだ。


俺の隣で真宙は、女子たちの声に応えるように、笑顔で手を振っているけど……今の俺にはそんな余裕ねぇわ。