「ねぇ一之瀬くん。美月ちゃんのことをあれだけ好きだと言い続けて、その好きな子を守れないようじゃダメでしょ」

「そんなの、俺が一番分かってる」


前島に言われなくても、さっき自分でも全く同じことを思ったわ。


前島に言われっぱなしなのは嫌だけど、前島の言うことは正しくて、ぐうの音も出ない。


「まぁ、美月ちゃんから身を引くかどうか、改めて考えてみてよ。君が本当に美月ちゃんのことを大事に思うなら……ね?」


自分の言いたいことを言うだけ言うと、前島は空き教室から出て行った。


俺は「はぁーっ」とため息をつき、空き教室の壁にもたれかかる。


なんで前島に、あそこまで言われなきゃならないのかと思うけど。あいつの言うことは、一理ある。


もし俺が前島の立場だったら……あいつと同じように思ったはずだから。


──美月は今日、俺が振った成宮に階段から突き落とされた。


先ほどの保健室での『怖かった』と言っていた美月の泣きそうな顔が頭をよぎる。


美月は俺のファンの女子から睨まれたり『あんな地味な子』とかよく言われてたしな。


美月は地味じゃないのに。あんなに魅力的で可愛い良い子なのに。


もしかしたら、俺のいないところで美月が、女子に何か言われたりされたりしていた可能性だってある。


いっそ俺が、美月を好きじゃなかったら……良かったのだろうか?


もしくは堂々と好きだと言わずに、黙っておとなしく指をくわえて、美月をただ見ているだけなら良かったのだろうか?


そしたら美月は……。