頭は肩に比べたら、さほど濡れていないと思うんだけど……。


「美月ちゃん、早くー!」


早くー! って。出た! 甘えん坊な朝陽くん。


朝陽くんに促されるまま、頭をタオルでわしゃわしゃと拭く。私は、王子様の言いなりだ。


「お前に髪拭いてもらうの、気持ちいい。美月、上手いな」

「そっ、そう?」


まあ、朝陽くんが喜んでくれたのなら良いか。


「今度は、いつか一緒に風呂に入ったときにでもまたやってな?」

「は? え? お、お風呂って! 公共の施設の前で、なっ、何を言ってるの!? そもそも一緒に入るわけないでしょうが! 突然そんなこと言わないで!」

「ちぇーっ。美月ってば、すぐ怒るのな」


なぜ、そこで口を尖らせるの。まさか本気じゃあるまいし。


朝陽くんは、いきなりとんでもないことを言うときがあるから、心臓に悪い。


「くくっ。怒った美月の顔も可愛いから、つい今みたいにからかいたくなるんだよね」


やっぱり……! やられたー。