一之瀬くんが喜んでくれるのなら……と思って、思い切って名前で呼んでみたんだけど……。


「朝陽くん?」


一之瀬くんは、固まったまましばらく動かない。


「え?! は!? 美月、今、俺のこと名前で……」


「うん。さっき、名前で呼んでって言われたから」


「嘘だろ!? やっべー、こんな不意打ち……困る」


頬を赤く染め、口元を手で押さえる一之瀬くん。


「困るのなら、これからも一之瀬くんって呼ぼうか?」

「……ダメ。ずっと、朝陽って呼んで。これからは一之瀬くん呼び、禁止だから」

「一之瀬くん呼びが禁止なら、王子様?」

「はあ? どの口が言ってんの?」


一之瀬くんの顔が、グッと近づいてくる。


「生意気なことばっかり言ってる口は、塞ぐよ?」