「一之瀬くんが、もし遊びで私に近づいてるのなら……もう構わないでください」
「あのなぁ。なんで急にそんな話になるわけ? もしかして、女子の誰かに何か言われた?」
ず、図星だ。
「改めて言うけど、俺は本気で美月のことが好きだから。
だからお前がさっき、他の男と……前島と一緒に歩いていたのを見て、今めちゃくちゃムカついてる」
一之瀬くんが再び、壁にドンと手をつく。
そして、一之瀬くんの顔が更に近づいてきて……その距離は、わずか数センチ。
彼の真剣な眼差しに、心臓が跳ねる。
「どうでも良い女のことなんか、他の男と2人でいるのを見ても、こんなふうに腹が立ったりしねぇよ」
一之瀬くん……遊びじゃなくて、本当に私のことを想ってくれてるんだ。
私を真っ直ぐ見つめる真剣な目と、彼の言葉から、それがすごく伝わってくる。
「ありがとう。一之瀬くん」
思わずお礼を言わずには、いられなかった。
「一之瀬くんじゃなくて、朝陽」
「え?」
「俺のこともいい加減、朝陽って呼んで」