「キャー! 一之瀬くん〜」
「王子様〜」
俺が廊下を歩いていると、女子の黄色い声が飛んでくる。そんな女子たちに、俺は愛想笑いをする。
ていうか、俺のこと王子様って、そんなふうに呼ばないで欲しい。
俺のどこが王子様なんだよ。
そもそも、誰が最初に言い出したのか知らないけど。
ハッキリ言って、そんなあだ名は迷惑だ。
「朝陽くん、今日もかっこいい!」
「ほんと、目の保養」
女子にかっこいいって言われるとそりゃあ嬉しいし、女子にちやほやされて気分が良い時期もあったけど。
これが毎日毎日続いたら……さすがにキツい。
「はぁ〜」
今となっては、女子のあの黄色い声援みたいな声も耳障り。
知らない奴に、勝手に写真とか撮られたりもするし。
俺はどっかのアイドルかよ? 見せ物じゃねぇぞ?
俺は、至って普通の高校生だ。



