桃田さんは当時から必死に文隆を楽しませてきたのだろう。


映画に連れ出すという行為が、それをあらわしている。


そして今回もだ。


「これもいいかもしれないわ。あ、あっちも」


次々とカゴにおもちゃを入れていく桃田さん。


その目はキラキラと輝いている。


文隆のために自分ができることがまだあったと、喜んでいるようにも見えた。


「さ、次はCDショップを見に行きましょう」


「まだ買うんですか?」


すでに買い物袋はパンパンだ。


「だって、文隆が好きな音楽があるかもしれないでしょう?」


桃田さんはそう言うと、元気な足取りでまた歩き出したのだった。