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俺は桃田さんの話を聞いて大きく息を吐き出した。


注文したアイスコーヒーの氷はとっくに解けて、グラスの中で層ができている。


それをボンヤリと見つめて「そうだったんですか」と、呟くのが精一杯だった。


文隆は余計宣告をされていた。


それがちょうど、20歳だった。


20年に1度アザが出現するなぞが、ここにあることがわかった。


「事件の後、森安さんたちがここへ引っ越してきたのはどうしてか知っていますか?」


「それはきっと、私がいたからよ」


桃田さんはそう言ってお冷を口に運んだ。


コーヒーはすでに空になっている。


「桃田さんがいたから?」


「えぇ。ただの同級生だったけれど、文隆の妹さんからは頼りにもされていたから」


「桃田さんは引っ越してきた森安さんたちを助けていたんですか?」


「まぁね。といっても、私も子供だったからそんな大層なことはできないけれど。それでも、わけのわからない土地に引っ越して事件が発覚して、村八分にされるよりはマシだったんじゃないかしら」


桃田さんはそう言って指先で眉間をもんだ。


森安一家は文隆さんの理解者である桃田さんがいたから、隣街に引っ越してきたみたいだ。