隙間なくぴたりと閉められた扉。やけに高く感じる天井と、やけに広く見える黒板。私と、それから彼の、たった二人しかいないのに、どういうわけだか息苦しかった。


お互い目も合わせず、話しかけもせず、私のシャーペンを走らせる音だけが響いて。数分が過ぎて、集中が途切れて手が止まった、その瞬間のことだった。


窓の外を眺めていた古瀬くんが、不意に、あ、と呟いて。



「今なら死ねるかも」



私の席は最後列で、教室全体が見渡せる位置だった。左斜め前を見ると、古瀬くんは窓を全開にして、身を乗り出していた。さらさらと、彼の黒髪が風になびく。


……窓が、開いていることに気が付いた。息苦しさは消えない。




世界から、私と彼以外の存在がぽっかりとなくなったみたいに、周りの音が消えて。


彼の音が、私の中に、ぬるりと侵入した。