クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する

「どこからか空気が流れ込んできますね」

石造りの階段を数段だけ降りた魅亜だったが、地下構造物内部の澄み切った空気には驚かされた。覚悟していたカビ臭さや埃っぽさをそれ程感じない。

「換気口が開けられているんだろう。ここは人が入る事を前提として造られた構造物だね」

響一郎が言う通り、地下だというのに時々風が吹いている。

「侵入者が酸欠にならないための安心設計なんですね。凄いですね、これを造った悪の組織は」

「いや、鳥飼くん。これを造ったのは悪の組織ではないよ。まあ、最初は天神様は祟り神だったからそれ程的外れではないか?それにしても君は着眼点が凄いな。父と祖父が揉めてるのも直感的に察したみたいだし」

「いえ、一枚岩の組織なんてありませんから」

「それも特撮ドラマの知識から?」

「はい、悪の組織はたいがい目的が達成直前に激しく割れます」

うん、ウチの父と祖父も見方によれば九州の悪の組織かもな、と響一郎は妙に納得した。

「道が左右に分かれてます」

2人並んで石造りの通路を真っ直ぐに進むと、前方で通路が分かれている。

「あまりあちこち触らないで。僕は右を確認するから君は左を」

「はい、触りません!」

ガコン!

「あら?」

「鳥飼くん!足元!」

響一郎が叫んだが遅かった。

彼がいた右の通路から、凄まじい轟音を轟かせながら濁流が2人に襲いかかってきた。

「ギャー!私何も触ってません!本当です!!」

「解ってるよ!多分トラップを踏んだんだ!」

2人は叫びながら左の通路に押し流されて行く。それでも何とか水面に顔を出し互いに手を伸ばす。

「先輩!」

「絶対に手を放すな!!」

響一郎は魅亜の手をしっかり握ると、2人はそのまま鉄砲水に流されて行った。