クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する

案内所の横を通り、参道から鎌倉時代末に花崗岩で作られた「中世の鳥居」を潜る。すると正面に心字池に架かる、赤い欄干の太鼓橋が見えくる。

その橋は渡らず左に曲がり、左右を太宰府天満宮幼稚園と絵馬堂に挟まれた道を真っ直ぐに進む。

古札納所を右に曲がると左手正面に、巨大な楼門がようやく見えてきた。

「いよいよですね」

緊張気味に魅亜が響一郎の背中に話しかけた。この場所まで一言も話さず黙々と歩いてきた2人だが、やっと第一関門に到着したからだ。

「うん、楼門を抜ければ目的地の本殿はすぐだ」

楼門を潜り抜け境内に入ると、燈籠に淡い燈火が灯っている。ぼんやりと明るい境内に朱塗りの本殿がそそり立つ。

「ここからが本番だ」

響一郎は本殿の前に立ち止ままると背負っていたリュックを地面に下ろす。魅亜も慌てて彼に倣う。響一郎はリュックから地図を取り出し頭にかぶったヘルメットのライトをつける。

「ここで待っていて」

彼は地図を片手に本殿の床下に頭を突っ込んだ。魅亜からはよく見えなかったが何かの仕掛けを探しているようだ。

「先輩私もお手伝いし」

ましょうか、と彼女が言いかけたその時だった。

出し抜けに魅亜の足元から地響きが聞こえてきた。

「何?地震!?」

彼女が思わず地面にしゃがむと、本殿の右側にある「飛び梅」が、その根元から大きく横にずれ始めていたのだ。

信じられないの光景に息を呑む魅亜。

「飛び梅」は大きく2メートルほど地面をスライドするとゆっくりと停止した。

「地図にあった通りだ。本殿のすぐ下に仕掛けがあったよ。それを右に回したら地下への入り口が開くとあった。大丈夫かい、鳥飼くん?」

腰を抜かした魅亜に響一郎は手を差し伸べる。その手をちょっと照れながら握る魅亜。自分も響一郎も革の手袋をはめているのが、チョッピリ残念な気がした。

「太宰府天満宮は、道真公の墓所に延喜5年(905)に祠廟を建てたのが始まりだ。その後造営された社殿は数度焼失した。現在の本殿は天正19年(1591)に竣工したものだ。それでも400年以上も経過しているからね。よくぞ、地下の仕掛けがそのまま残っていたものだよ」

響一郎はしきりに建造物の精巧な仕掛けに感心しているので、幸い魅亜の乙女心には全く気づいていない。

「先輩、では早速」

「うん、宝物探しに行くよ」

響一郎は魅亜の手を取り、石の台座ごとスライドした「飛び梅」の根を避ける。

そして地下へ続く階段を魅亜と一緒に慎重に降りて行った。