クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する



「夜の太宰府天満宮って、やっぱり不気味ですね」

「そうだね、所々に灯りがあるからまだましだけどね」

魅亜と響一郎は菅原家の自家用車で目的地までやって来ていた。

「坊っちゃん方、天満宮には既に理事長が話を通しています。ですが、地下に降りたらくれぐれもご用心を。敷地内での多少の騒ぎには目をつぶるとの事ですが、地下で起こる事には一切責任を負わないとの事です」

「ありがとう島さん。こんな夜分にご足労かけたね」

「いえいえ、夜勤手当てと、もしもの場合の危険手当ても頂けるのでお気遣いは無用ですよ」

黒のSUVを運転してきたのは学校の警備員の島だった。

「理事長先生は今回の件を何と?」

「心配はないよ、鳥飼くん。お祖父様は大変な喜びようでね。『後の事は全て任せろ!九州菅原家の権力と財力を注ぎ込み、何をやっても全てもみ消してやる!どーんとやって来い!!』だそうだ」

響一郎は祖父のあまりの言い草に、少しだけ恥ずかしそうに俯く。魅亜はそんな響一郎も気になったが、島の方も別の意味で心配だった。

「あの、島さん。学校で遭難した時もお世話になりました。それで、一つお伺いしたいんですが」

「何でしょう?」

「島さんは、理事長先生と校長先生、どちらに報告するんですか?」

魅亜の何気なく聞こえる質問に、島と響一郎を思わず息を呑む。

それもそのはず彼らは今の今まで、彼女がそれ程、頭が切れるとは思ってもいなかったからだ。

「鳥飼くん、君……。父と祖父の意見が割れている事に気づいてたのかい?」

「いえ、先輩。最初は警備員さんが私を助けてくれたのは偶然だったと思ってたんです。でも、今夜運転してるのを見て、先輩のお家の私的な仕事もしていると解って。それなら、私を助けてくれたのも優しさからではなく、誰か、もしくは複数の人達から指示されたからと考えただけです」

それならば、今夜の件も魅亜達の行動を監視して逐一誰かに報告するはずだ。

魅亜はそう考えたのだ。

「お嬢さんのおっしゃる通りです。あの時は騙すつもりはなかったが、校長先生のご指示で貴女を職員棟の外にお出ししたのです。ですが、校長先生も私も悪意はなかった。特に校長先生は宝物探しに貴女を利用する事に反対されています。そのため坊っちゃんはもちろん、鳥飼さんが危険な目に遭わないように私を付けられたんです」

「そうでしたか」

「さあ、鳥飼くんそろそろ出発しよう。この時期の天満宮の閉門時刻は19時。現在、20時を回ったところだ」

「はい、行きます!では、島さんはここで待っていて下さいね」

魅亜がそう言って島に頭を下げる。

「気をつけて、お2人とも!何かあれば連絡を!」

先頭を歩く響一郎の後を駆け足で追いながら、魅亜は車内の島に笑顔で手を振った。