クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する



「田部井ちゃんを……田部井ちゃんの意識を回復させる方法はないんでしょうか」

アキラに追い出されるようにして、魅亜と響一郎は病院から出た。

時刻はもうすぐ正午になろうとしていた。

街の人混みを抜けながら、魅亜は響一郎と肩を並べて一緒に歩く。少し前ならまるで夢のような出来事に、有頂天になっていただろう。

「詳しい容態を聞けなかったからはっきりとは言えないが、希望を捨てずに時間をかければ──」

「そんなに待てません!」

魅亜は今までに見せた事のない必死な表情で、響一郎に訴えた。

「先輩もアキラ君から聞いたでしょう!?学費を出すために田部井ちゃんのご両親は働いてるんです!田部井ちゃんの意識がこのまま長期間戻らなかったら、ご両親はその間の入院費と治療費を払えなくなるかもしれない!もし、そんな事なったらアキラ君も学費を節約するために学校を辞めてしまう!そして何よりご両親が、負担に耐え切れずに治療を諦めてしまったら田部井ちゃんは……田部井ちゃんの命は……」

「鳥飼くん、君はそこまで親友のことを……」

「助けたいです。私のことをいつも心配してくれた田部井ちゃんをなんとかして助けたいです……」

「一つだけ、方法があるかもしれない」

「え?」

人波の中で立ち止まり、両手の拳を握り締めて震える魅亜に、響一郎は静かに話しかけた。

「天神様の宝物があれば、あるいは可能かもしれない」