クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する

「それで、田部井さんの容態はどうなんですか」

響一郎は病院の廊下で魅亜に寄り添いながら医師に尋ねた。

出会い頭に乗用車に跳ねられた田部井ちゃんは、響一郎が呼んだ救急車で病院に搬送された。

休日診療もする、救急指定病院は幸いにも菅原邸から近かった。

魅亜と響一郎は救急車に同乗して田部井ちゃんに付き添った。だが、倉員と後藤の2人は当然のようにその場から逃げ出した。

「まだ何とも言えない。詳しくは家族が来てから話す」

医師の素っ気ない返事に、魅亜は堪らず食い下がる。

「た、田部井ちゃんは……田部井ちゃんの意識はいつ戻るんですか!?」

「だから、まだ何とも解らないと──」

「戻らないんですか……戻らない可能性があるんですね?」

「詳しくは検査結果しだいだね」

医師がそそくさとその場を去ると、魅亜は気が抜けたように廊下にしゃがみ込んでしまった。

「鳥飼くん、しっかり!とにかくここに座って」

響一郎はICUの前にある付き添い用のソファに彼女を座らせた。

「あ、あたしのせいです。あたしが田部井ちゃんを追いつめたから……。あたしがずっと、田部井ちゃんが苦しんでいるのに、気づかなかったから……」

「違う!君のせいじゃない!」

「あ、あたしを田部井ちゃんは止めていたのに……あたしは全然聞かなくて、浮き浮きして一人で浮かれて。あ、あたしが……す、菅原先輩を好きになんてなったから……!」

「鳥飼くん……」

ポロポロと涙をこぼしながら、小刻みに震える魅亜。

その彼女を立ち竦んだまま見守るしか、今の響一郎にはできない。

けれど何か言わなければ。これは決して魅亜のせいではない。だからそんなに自分を責めないでくれ。

響一郎がそう、言いかけた時だった。

「そうだよ、あんた達のせいだよ」

魅亜のいる廊下に、冷たい声が響いた。