クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する

魅亜が慌てて菅原邸の正面を見ると、立派な門構えとは別の右横の小さな木戸が開き、そこから倉員容子と後藤益美が出てきた。

「スパイって、何の事!?」

「容子さんに向かって失礼ですよ!その口の利き方!ねぇ、容子さん?」

動揺した魅亜が倉員に食ってかかると、後ろに控えた後藤が早速、倉員の機嫌をとる。

「まあ、いいけど~?どうせアンタ達は絶交するんでしょ?」

「しないよ!あんたこそ、さっきから何訳わかんない事、言ってるのよ!」

「魅亜ちゃん!」

似合いもしない縦ロールを揺らしてふんぞり返る倉員に腹を立て始めた魅亜を、なぜか田部井ちゃんは必死に止める。

「いいの~?私に逆らったらアンタのパパ、首よ~?」

倉員の言葉に田部井ちゃんは見る見る青ざめていく。

「パパって、まさか田部井ちゃんのお父さんを人質に取っとうとね!あんた達は!?」

魅亜が標準語から博多弁に戻る。彼女が本気で怒っからだ。

「この人掠い!犯罪者!警察に通報するけんね!」

「何勘違いしてるんですか!田部井さんは、貴女の情報を知らせてくれる容子さんの家来って意味ですよ!」

「家来ならあんたの事やろ!?」

「違いますよ!私は容子さんの親友です!ねぇ?容子さん」

魅亜に反撃された後藤は、倉員におもねるが肝心の倉員は素っ気ない。

「アンタはしもべ!黙ってなさい!それより田部井さんいいの!?製薬会社の営業マンのパパを、うちの病院から締め出すわよ!」

倉員は田部井ちゃんに向かって、嫌らしい笑みを向ける。

「そッ……それはやめ……」

「なるほど、やはりそういう事か」

田部井ちゃんが青ざめて何か言いかけた時、菅原邸の巨大な2枚の門扉が、ゆっくりと内側に開いていった。