クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する

「菅原先輩のお宅訪問をと、取りやめにし、しても、よ、よろしいでしょうか」

しどろもどろの魅亜の台詞に、響一郎の表情が、ばりばりっと強張った。

「な、何だい鳥飼くん。急用かい?」

「いえ、その、あの」

ここで、響一郎はピンときた。元々は切れる男だ。勘は鋭い。

「誰かに何か言われたのかい?」

「ええ、はあ、まあ」

田部井ちゃんの様子が気になるんです。隠し天女の事も知っていたし。何だか凄く悩んでるみたいで。

魅亜は思い切って響一郎に相談しようかと思う。

だが響一郎は、まったく別の切り口から迫ってきた。

「嫌がらせを言ってくる不埒な輩がいるんだね」

「はい、実はそうなんです……」

凄い!さすが菅原先輩だ!田部井ちゃんのことも判ってくれてるんだ!

「それは、女子だね?」

「はい」

悩んでる田部井ちゃんは女子で間違いありません!

「そうか、だとすると」

響一郎は素早く、思考を巡らす。

魅亜の傍にいて菅原邸訪問を邪魔する女子。

親友の田部井麻矢くんは除外。理由、鳥飼くんを妨害するメリットがない。

他の該当人物、鳥飼くんと同じクラスの倉員容子。可能性大。理由、メリットだらけ。まだ中学生だというのに、本気で今すぐにでも僕と結婚できると思っている。しかも、救い難いほど底意地が悪い。

「容子かい?」

「は?」

「君を苦しめてるのは倉員容子だね?」

容子と名前を呼び捨てにする仲なのか、先輩とあの悪魔は!?

あまりの衝撃に、今度は魅亜の表情があからさまに強張った。

「やはりそうか。解ったよ何も言わないで。容子とはそろそろ決着を、とは思ってたんだ」

「けっ……決着と言いますと」

「彼女との関係を内外にハッキリさせる」

それは一体、どういう事なのか。

魅亜は想像するだけで卒倒しそうだった。

だけど、これは絶好の機会かもしれない!

倉員達の悪行を白日の下にさらけ出す。そしたら私と田部井ちゃんに嫌がらせもできなくなる。

上手くいけば菅原先輩が倉員を嫌いになって、婚約も破棄してくれるかもしれない!

ですよね?天神様!?

今更ながら天満宮に祈願した事実を思い出す魅亜。

「では鳥飼くん、今度の日曜日は中止だね」

「はい!」

「代わりにその日に容子を我が家に呼び出し、君への嫌がらせをやめさせる」

「え?」

「心配はいらない。前々から彼女とは一度じっくりと話さないければと思っていたんだ」

決意を固めた眼差しで天井を睨む響一郎に、魅亜は言い知れぬ不安を感じた。