クールな完璧先輩は推し活女子を溺愛する

「知らん!」

「知らん?」

「知りません」

事務員は響一郎が怪訝な顔をするとめんどくさそうに言い直し、また新聞に目を落とした。

「まだ、降りてきてないのか?」

考えてもみれば1基しかないエレベーターを“下り”で自分が使ったのだから、魅亜が響一郎より先にエレベーターで1階に降りたはずがない。

響一郎はすぐさま魅亜を追ったから、二人の時間差はほとんどないからだ。

いつもの冷静な響一郎ならすぐにその事に気づいたはずだ。

だが、今の彼はそんな単純な事実に気づかぬほど慌てていたのだ。

「階段を使ったのか?5階から?何でそんな……」

エレベーターを使えないほど、泣いて混乱していたのかい?鳥飼くん……。

すまない……。

そんなにキミを傷つけるつもりなんてなかったんだ──