「幸助が行き倒れてたから、このお姉ちゃんが家に入れなくなった僕と幸助を助けてくれたんだよ」
ナツ君がそう言って、私は心の中で小さく頷いた。
そうです、その通りです。
近所の住民の邪魔になっては困りますので、撤去したのです。
「なるほどなるほど。そうでしたか、てっきり琴吹さんみたいな可愛らしい女性に誘拐されてしまったかと勘違いするところでした。助けていただいてありがとうございます」
私もたいがい失礼だが、そっちもそっちだ。
てっきりそんな勘違いをされては大いに迷惑である。
「いやあ、優しい方がお隣さんで嬉しいです」
と幸助に両手を握られ、感謝を述べられた。
「ええ、いえ。まあよかったです何事もなくて……」
幸助は浦島太郎に助けてもらった亀のように、お礼をいう。
そして彼は私の手を包み込んでシェイクハンドし、その心臓に悪い美顔を不用意に近づけてくる。
友好的なのはよろしいが、距離が近い。
おかげで私は「ええ……まあ、はあ……」という風にあからさまにたじたじになってしまった。



