「まあさ、実家に戻ることになっただけだから。庵歩とは当分おさらばだ」
「実家ってことは、家を継ぐとかそういうの?」
「……うん、まあ、そうだな」
珠手が私から目を逸らした。どこを見ているのかと思えば、私の後ろだ。
「……珠手? どうかした?」
後ろを振り返ろうとした時、珠手に「庵歩」と呼びかけられ、頬は大きな手で包まれた。
一瞬のうちに私たちの距離が縮まった。憂いを帯びた瞳はすっかり目の前まで迫っていた。
何が起こるか理解が追いついた私は咄嗟に顎を引いた。
「なんで……ダメだよ」
「顔真っ赤じゃん」
「う、うるさい……。珠手が変なことしようとするからっ。どういうつもりか知らないけど、友達の私にまでそういうことしないで……」
珠手はふっと息を漏らし笑った。こうなることは予想していた、というように一歩下がった。
「俺、もう一つ言いたいことあったわ」
「な、なに?」
「………聞いて驚くなよ。俺、庵歩のこと好きだ」



