庵歩の優しい世界



 珠手、どうしてるかな。


私はやっぱり、そのことが気になった。


せっかく看病してくれたのにあんな別れ方をしてしまったせいで、こんなに穏やかな朝ごはんなのに、うっすら雲がかかったような気分になる。


でも、どんなにそのことが引っかかろうとも、人間、お腹は減るもので、あっという間に私たちの朝ごはんは終了した。


 幸助とナツ君が家に帰ったあと、私は珠手に電話をしてみた。


「………うーん。出ないな、いつもワンコールで出るのに。いや、ワンコールで出る方が変なのか?」

 何回かけても珠手が出ることはなかった。

嫌われてしまったのだろうか、こんなこと一度もなかった分、不安は二割ましだ。


これじゃあまるで珠手に恋した女の子みたいじゃないか。

その子たちは多分、珠手が電話をとるまでのコール音が異様に長く感じたり、反応が返ってこないと、しょんぼり肩を落としたりしたんだろうな。

今の私みたいに。