ふと、キッチンの小窓から暖かい日差しがさしてきた。手元でぱちぱちといい色に焼けたベーコンと目玉焼きが出来あがった。
昨日瀕死だったのが嘘みたいに美しい朝だった。チラチラと舞うホコリを見てそんなことを思った。
ベーコンエッグといい感じに焼き目のついた食パンを食卓に並べて、幸助とナツ君を起こそうと振り返ると
そこにちょうどよく、二人が似たような寝癖をつけて起きてきた。
「おはよー。なんかすごくいい匂いがするよ、なになに??」
私の手元を幸助が覗き込む。大したもんじゃないけど、そこまでウキウキされるとなんだか嬉しいものだ。
「おはよう。朝ごはん作ったから良かったら食べていってください」
「え、いいんですか!」とさっきまで棒線のような目だった幸助がすかさず目を輝かせる。
「ぜひ」
「やった! 庵歩さんの手料理ですね!」
「そんないいもんでもないんですけど」
私は苦笑いする。でもこの二人といると、なぜだか顔色を伺ったり気をまわしたりする必要が感じない。
幸助の話し方とか表情とかが柔らかくて頼りなくて、そこがいい。変に気を使うのも馬鹿らしいと思ってしまうからか。
「でも、庵歩さん。そんなに動いて大丈夫なんですか?」
「もうこのとおり、すっかり元気になりました。ありがとうございます」
「庵歩ちゃん、昨日すっごくうなされてたよ? ほんとに大丈夫? しんどくない?」
ナツ君が足元に駆け寄ってきてぎゅっと抱きついてきた。
私は小さな頭を撫でる。
「おかげさまで。でもナツ君にうつったりしたらダメだからしばらく家に来ないほうがいいかも。完全復活するまでもうちょっと待ってね」



