段ボールからは、洗面器や洗顔料、衣類といった生活に絶対必要なものが出てきて、
なんだかこの隣人が1ヶ月どんな生活をしていたのか恐ろしくなった。
確かにうちに来るとき、たいてい二人ともTシャツにジーンズでラフな格好だったから、
段ボールから必要最低限のものくらいは出してたんだろうけど…………。
いや、むしろ今来ている服とその洗い替えしか出してなかったのかも。
タンスなどは完備されてるのに、なかは空っぽだった。
そこに服を畳んでは入れ、畳んでは入れを繰り返していく。
途中、幸助のパンツもあって焦ったけど、しゃしゃっと素早くやっつけた。
「あれ、これって………」
次の段ボールを開けると、たくさんの書籍と絵本が入っていた。
私はそれを見てちょっと微笑ましくなった。
「琴吹さん、どうかしました? え、なんか変なもの入ってましたか⁉︎」
幸助があわてて近寄ってきた。怪しかった。
「そんなことないですよ。……え、変なもの入れてるんですか?」
「いえいえ、まさか! へへ」
「……ほんとかなあ」
「ほんとですよ、やだなあ」
なに、その反応。
それは変なものを入れてる人の反応だ。あーあ、幸助のこと見直しかけたのに、あっさり崩してくれるわ。
「さあ、続きやるぞー」
そんな棒読みの掛け声でさっさと持ち場に戻っていった幸助に訝りの視線を送った。
一体何が隠してあるんだろうか。………まあ私が知ったこっちゃないけど。



