世間話はこれくらいにして、そろそろ本題に入る。
「で、なぜあそこで倒れていたんですか」
ついに確信に迫ることができた、と思ったのに。
「あれ、そういえば……なんで俺はこんなに痣だらけなんだ?」と幸助が被せて言ってきた。
紆余曲折はもういい。
十分雑談をしてお腹いっぱいであるのに、幸助はまだことの真相の外周をなぞりたいようだった。
わざとか、わざとなのか。
なぜこの男が部屋の前で行き倒れていたのかという、すぐに答えの出そうな事柄について、
私はいつまでもいつまでもモヤモヤしなければならないのか。
「腕も痛いし、お尻も痛い。なんかヒリヒリする」
幸助の外傷のそのどちらにも心当たりがあったから、何にも言えない。
もはや申し訳なさから行き倒れていた理由を聞き出すことすら難しくなった。
美男子に傷をつけ、その上、尋問するなど良心の呵責に耐えられない。



