私の家は駅から徒歩10分の3LDKマンション。
 両親と私の3人で暮らしている。

 与えられた私の個室は録画機能のついた大型テレビ。
 ラノベとマンガ、アニメのDVDでいっぱいだ。

 壁には様々なポスター。
 棚には、フィギュア。
 まさにオタクの部屋。

 私は自分の部屋を久しぶりに片づけ、そうじした。
 そうお客様が遊びに来る、何と何と!
 白鳥さんが私の家へ遊びに来るのだ。

 え?
 成瀬君は遊びに来ないのかって?
 いやいや、成瀬君は『もう少し先』になると思う。

 モブで地味子、生まれてからず~っと彼氏なしだった私だけど、メーカーに勤めるサラリーマンのお父さんは私の事をとても可愛がる人。
 専業主婦のお母さんとは、「ゆい、お前はパパっ子だね」と良く話していた。

 『娘命(むすめいのち)』の父の前にいきなり『彼氏』の成瀬君を連れて行ったら、ショックで倒れてしまうかも。

 そもそも私は友だちを連れて来たのは数えるほどしかない。
 中学校へ入るとほぼ皆無。
 だから成瀬君を招くのは『当分』無理。

 さてさて!
 そんな私の家へなぜ白鳥さんが来る事となったのか?
 実は私に原因がある。

 先日、教室でこんな会話があった。

「ゆい」

「ん? 何、白鳥さん」

「今度の祝日、ゆいの家へ遊びに行きたい? 都合は? 成瀬君とデートは?」

「祝日は家にいる。デートはしない。成瀬君は野球部の休日練習があるって」

「よし、じゃあゆいの家へ行きたいっ! お願いっ!」

「え? そこまで言う? まあ別に構わないけど」

「やった! 成瀬君は当分、ゆいの家へ遊びに行かないって聞いたし、だったら私がゆいのオタク部屋でラノベとマンガ、アニメに染まりたいっ! 埋もれたいっ!」

「おいおい」

「おみやげに、私が買った悪役令嬢もの10冊持ってく! 貸してあげる!」

「ありがと! って、は? 10冊? 白鳥さん、確かラノベ持ってなかったよね?」

「買った! 今100冊ある!」 

「100冊ぅ!?」

「うん! ここ1か月で100冊買った! もっともっと買うよ」

「はあ~、呆れた」

 さすがというかやはりお金持ちの白鳥さん。
 でも、いくらラノベが好きだからといって、1か月で100冊買う!?

 しかし、白鳥さんは悪戯っぽく笑い、立てた人差し指を左右に振る。

「ノンノンノン。呆れたのはウチのママ」

「白鳥さんのお母さんが? 呆れたの?」

「うんっ! 娘の私からラノベを取り上げて片っぱしから読んでる。悪役令嬢、最高に面白いって」

 1か月で100冊ラノベ買う白鳥さんもたいがいだが、そのラノベを取り上げる母もいかがなものか?

 そう思ったが、ラノベファンが増えるのはたいへん良い事。
 私は笑顔で、白鳥さんの来訪をOKしたのである。