「そうかな」

 八乙女くんは首をかしげる。

「俺は前からこうだったと思うけど。若菜さんが鈍感なだけで」

 そ、そうかな。

「私、そんなに鈍感かな……」

「鈍感だよ。普通、好きじゃなきゃこんなに頻繁にデートになんて誘ったりしないから」

「だってそれは、私、八乙女くんは恭介くんの事が好きだと思ってたから……」

 私が言うと、八乙女くんはキョトンと目を丸くした。

「え、なんで恭介?」

「だ、だってあの時、教室で――」

 私は放課後、八乙女くんと恭介くんたちの会話を盗み聞きしていたことを打ち明けた。

「……ああ。あれ、聞いてたのか」

 八乙女くんはポリポリと頭をかく。

「俺が恭介に好きな人を教えたくなかったのは、いっつも恭介に好きになった女の子を取られるからだよ」

 え、えー!?

「な、何それ。恭介くん、そんな人だったの!?」

「いや、本人が言うには、悪気は無いらしいんだけどな。なんでも俺との仲を取り持ってやろうと俺の好きな子に近づいたら、いつも向こうから好意を持たれるらしくて」

 うーん、それは何となく分かる気がするな。恭介くんって明るくて話しやすいし頼りがいがあるし。

 っていうか、八乙女くん、過去に好きな子がいたことあるんだ。

 いつも女の子の告白を断ってるっていうから、てっきり女の子に興味が無いのかと思ってた。

「なぜか俺が好きな子に限って俺より恭介がタイプだったりするんだよな」

「そうだったんだ」

 私があははと笑っていると、八乙女くんは急に真面目な顔になる。

「だから、好きな子とつき合えたのは若菜さんが初めてだ」

「……そう、なんだ」

 私はなんだか照れてしまって、あわててスマホに視線を落とす。