「キャーッ!」
「頑張って、八乙女くん!」
「恭介くーん!」

 試合時間になると、体育館の周りは黒山の人だかり。

 私とサエちゃんは、人と人の隙間から背伸びをしながらバレーボールの試合の行方を見守った。

「恭介」

 八乙女くんが恭介くんにトスを上げる。

「はいよ!」

 恭介くんが強烈なスパイクを相手コートに叩き込む。

「試合終了!」

 ピーッと笛の音が鳴り、試合が終わった。
 
 試合は3-0でストレート勝ち。相手は一年生のクラスとはいえ、強さの差が素人目にもハッキリと見えてびっくり。

 二人とも、本当に運動神経良いなあ。

「若菜さん」
「若菜さーん、サエちゃーん!」

 八乙女くんと恭介くんがこちらにやってくる。

「二人とも、お疲れ」
「お疲れ様! すごかったねぇ」

 サエちゃんと八乙女くん、恭介くんの三人が盛り上がる。

 あれ、なんか自然に四人でひとグループになっちゃったけど、ひょっとして二人、まだ私についてくるつもりなのかな?

 サエちゃんもいるし、ひとりじゃないから別にそこまで心配しなくていきんだけどなあ。

 ま、いっか。

「次はどこと対戦なの?」

 サエちゃんが恭介くんに尋ねる。

「まだ分かんない。隣のコートの試合の結果次第かな」

 恭介くんと八乙女くんが背伸びをして隣のコートをのぞく。

 どうやら、ストレート勝ちだったうちのクラスと違い、隣のコートの試合はまだ決着が着いていないみたい。

「隣、少し見てみようぜ」
「うん」

 八乙女くんと恭介くんの二人が隣のコートに向かって歩き出す。

 私も二人の後についてぼんやりと歩いた。

 と――。

「若菜!」

 急に私を呼ぶ声がして顔を上げる。

「へ?」

「――若菜さん、危ない!」

 気がつくと、隣のコートのボールがこちらに猛スピードで飛んできていた。

「あぶっ!」

 ボールは私の頭にヒットし、私は間抜けな声を出してその場に倒れた。