乙女チック同盟~私と学園の王子様のヒミツの関係~

「おはよう!」

 ガラリと教室のドアを開ける。

「おはよう、若菜」

 出迎えてくれたのは、ロングヘアーにメガネの知的な美人。

 前島冴華(まえじまさえか)、通称サエちゃんは私の親友で、いつも二人でマンガやアニメ、小説の話をしてるんだ。

「あれっ、若菜、顔色悪いよ? 夜ふかしでもしたの?」

 サエちゃんが私の顔をじっと見つめる。
 さすがサエちゃん、目ざとい。

「えへへ、ちょっと本に夢中になっちゃって……」

 答えつつ、教室の中を見回す。

 八乙女くんは――いた!

 八乙女くんは、教卓の前でクラスメイトに囲まれて何やら話してる。

 よしっ。

 ドキドキするけど、教室で会ったら本を渡そうって決めてたし、ここは勇気を出して話しかけなきゃ。

「八乙女く――」

 私が思い切って八乙女くんに声をかけようとしたその瞬間、髪を茶色くしたオシャレな女子が八乙女くんに声をかけた。

「ねぇねぇ、八乙女くん、この雑誌に載ってるのって八乙女くんじゃない?」

 どうやらファッション誌に八乙女くんが載ったみたい。

 ひゃあ、すごいなあ。

「ああ、これ。なんか去年の学祭の写真をSNSで見たとかって雑誌の人から連絡来て、モデルしないかって」

 そっけない口調で八乙女くんが答える。

 そういえば去年、学園祭の運営の人が「学園のプリンス」に選ばれた八乙女くんの写真をSNSに上げたんだけど、それが結構バズって話題になったんだっけ。