「大丈夫か? もうすぐ出番だぜ」

 恭介くんに言われ、ハッと気を取り戻す。

「う、うん。頑張ろうね、恭介くん」

 いけないいけない。今は二人三脚に集中しなきゃ!

 私はぱんぱんと自分の頬を叩いた。

 うん、とりあえず今は、心を無にして走ろう。

「位置について、よーい……」

 パンという音と共に、私たちは走り出した。

「いち、に、いち、に!」

 とりあえず私は頭を空っぽにして、ただ足を動かした。

 この作戦が功を奏したのか、今までで一番上手く走れてる。現在二位。ちなみに一位は八乙女くんとサエちゃん。

 よし、行ける! このままゴールできるかも!

 だけどその瞬間、欲が出たせいか、急に足がもつれた。

「きゃあっ!」
「うわわっ!」

 気がついたら、私と恭介くんは地面に転がっていた。

「いてて……若菜さん、大丈夫!?」

 私に覆い被さるようにして転んだ恭介くんが慌てて起き上がる。

「うん、大丈夫」

 私は恭介くんに腕を引かれ、何とか立ち上がった。

「きゃあっ」
「うわっ」

 すると目の前で、私の前を走っていた八乙女くんたちも転倒した。

「ありゃ、八乙女のやつ、俺らがコケるのを見て動揺したかな」

 ニヤリと笑う恭介くん。

「丁度いい、今のうちに追い越そうぜ」

「う、うん!」

 二人でもう一度走り出す。


 結局、私たちは八乙女くんたちのペアを追い抜き、そのままゴールした。

「やった!」

 ま、まさか一位でゴールできるなんて!

「ちぇっ、二位かぁ」

 残念そうに「二位」と書かれた旗を振る八乙女くん。

「残念だったな!」

 恭介くんはニヤニヤしながら二位の旗を持つ八乙女くんのほうを見た。

「ふふーん、俺の勝ちー」
「うるせーな」

 じゃれ合う二人。

 この二人、本当に仲良いな。

 私は微笑ましい気持ちで二人を見守った。

 良かった。この二人なら、私、応援できるかも。