「……ねえ、恭介くん」

 私は、このさい何となく気になっていたことを尋ねてみることにした。

「ん、何?」

「恭介くんと八乙女くんって、なんで体育祭の参加種目、二人三脚にしようと思ったの?」

「ああ、最初は何かの球技にしようと思ってたんだけど、バスケ部はバスケ禁止だしバレーにしようかって話になって、そしたらあと二つか三種目じゃん?」

 体育祭の種目は、バレー、バスケ、卓球、それにリレー、玉入れ、二人三脚、借り物競争、パン食い競走。

 この中から、各自二つか三つの種目に参加することになっている。運動オンチの私には辛いルール。

「そしたら八乙女が二人三脚にしないかって」

「八乙女くんが?」

 私がびっくりして聞き返すと、恭介くんは悪戯っぽく笑った。

「たぶん、若菜さんがいるからじゃないの?」

「ええっ、そんな、まさか!」

 私は八乙女くんをチラリと見た。
 どうして八乙女くんが私と同じ種目をやりたがるの?

「八乙女、本当は若菜さんとペアを組みたかったんだと思うよ」

「そ、そうかなあ」

 八乙女くんがペアを組みたいと思っているのは恭介くんだと思うけど。

「でも八乙女くんと恭介くんはバレーにも出るんでしょ。大変じゃない?」

「まあね。でも、何とかなるっしょ」

 朗らかな笑顔で笑う恭介くん。いいなあ、その自信。羨ましい。

「おーい」

 私たちがそんな話をしていると八乙女くんたちがこちらにやってきた。

「若菜ー、そろそろ教室に戻らない?」

「あ、うん! それじゃあ、恭介くん、今日はこの辺でいいかな?」

「ああ。明日も特訓よろしくな!」

 屈託のない表情で笑う恭介くん。

 げっ、この特訓、明日もあるのかあ。

 でも、明日の朝も八乙女くんに会えるのなら……それはそれで、いいのかな?