チラリと八乙女くんのほうを見る。

 確か八乙女くんも二人三脚なんだよね。
 八乙女くんとペアだったらどうしよう……!

 八乙女くんの恋は応援してあげないといけないけど、二人三脚で一緒に走るくらいなら……いいよね?

 ドキドキしながら男子がくじを引いていくのを見守る。

「それでは一番の人、手を挙げて」

 一番のくじを引いた男女が手を挙げ、ペアが決まる。

 八乙女くんは一番じゃないみたい。これはもしかして……。

「では次、二番の人」

「は、はいっ」

 私は慌てて手を挙げ、男子のほうを見た。
 男子で手を挙げているのは――。

「おっ、俺のペアは若菜さんか。よろしくな!」

 ニコニコと握手を求めてきたのは、なんと恭介くんだった。

「よ、よろしくお願いします……」

 分厚くて大きな手を握る。
 うわあ、大きい手。それに身長も、近くで見ると本当に大きい!

「あはは、何で敬語?」

 屈託のない笑顔で笑う恭介くん。
 私は慌てて言い直した。

「よ、よろしくね」

 チラリと八乙女くんの方を見ると、サエちゃんと楽しそうに笑ってる。

 ズキンと胸が痛む。

 そっかあ、八乙女くんとサエちゃんがペアなんだ。いいなあ。

「……もしかして、八乙女とペアが良かった?」

 恭介くんが私の顔をのぞきこんでくる。

「え!? そそ、そんな事ないよ。頑張ろうね」

「うん、頑張ろう。やるからには一番を目指そうぜ」

 やる気マンマンの恭介くん。どうしよう。

「うーん、でも私、足も遅いし、私とペアじゃ一番なんて無理かも……」

 私が苦笑いを浮かべていると、恭介くんはがっしりと私の手をつかんだ。

「なーに言ってんだ。こういうのはな、足の早い遅いじゃなくて息が合ってるかどうかなの。二人でバッチリ息を合わせていこうぜ!」

「は……はあ」

 ど、どうしよう。恭介くん……やる気だ。
 私は別に一位なんて狙ってないんだけどなあ。

「それでなんだけど、練習はいつする? 明日の朝とか大丈夫?」

「へっ、朝?」

 私がキョトンとしていると、恭介くんはこぶしをギュッと握り締めた。

「朝練だよ。二人三脚の特訓!」

 え、ええっ、特訓!?

「それとも朝に何か予定とかある?」

「う、ううん、特に予定とかはないけど……」

 め、面倒くさい!