そして私たちは、二人で可愛らしい階段を上がった。八乙女くんが二階の一番奥の部屋を開ける。

「ここが俺の部屋」

「わあっ!」

 まず目に飛び込んできたのは、壁一面の大きな本棚。

 私の好きな少女レーベルのマンガや小説がこれでもかとぎっしり詰まっているのが、チラリと本の背表紙を見ただけでも分かった。

「わぁ、『お姉さま』シリーズがある! 『乙女街道』も全巻揃ってる!」

 私が興奮しながら本棚に見入っていると、八乙女くんが照れ笑いを浮かべる。

「『乙女街道』いいよね。俺、昔から大ファンでさ」

「私も好き! 面白いよね~!」

 前から思ってたけど、私と八乙女くん、本当に本の趣味が合うみたい。なんだか嬉しいな。

 キョロキョロと部屋を見回す。

 それにしても――男の子の部屋って初めて入るけど、レースの小物にピンクのカーテン、少女漫画に大量のぬいぐるみ。男の子っぽさが全くない。

 ここ、本当に八乙女くんの部屋なの?

「男っぽくない部屋だろ?」

 まるで私の心を読んだかのように八乙女くんが言う。

「えっ……まあ、確かに想像と少し違うというか……」

 少しというか、だいぶだけど。

 私がしどろもどろになりながら返事をすると、八乙女くんは薄く笑った。

「こんな部屋だからさ、この部屋にクラスメイトを入れるのは若菜さんが初めてだよ」

「えっ、そうなの? 恭介くんは?」

「恭介も、この部屋には入ったことないよ。入れたら絶対にバカにしてくるし」

「まあ、確かに男の子っぽくない部屋だけど……」

 何だか嬉しいな。私が八乙女くんの一番だなんて。