私は恭介くんの顔をじっと見つめた。

 恭介くんは、色白で繊細そうな八乙女くんとは正反対の、色黒でガッチリ系のイケメン。

 頼れる兄貴分って感じで、クラスの中心的存在なんだ。

 「バスケ部のワイルド王子」って呼ばれてて、八乙女くんほどじゃないけど、かなり人気のある男子。

 そんな恭介くんが――何で私と?

「で、でも、部活は?」

 恭介くんは屈託のない笑顔で笑う。

「大丈夫、大丈夫。ほら、もうすぐ体育祭じゃん? その準備で、しばらく体育館使えないんだ。だからしばらく自主練で暇だし」

「そ、そうなの。でも――」

「恭介」

 と、突然冷たい声がして振り返る。

 教室の入口に立っていたのは、少し怖い顔をした八乙女くんだった。

「あ、おはよう、八乙女くん」

「おはよう、若菜さん」

 八乙女くんは私に笑顔を向けたけど、すぐにまた険しい顔をして恭介くんに向き直った。

「恭介、何やってんの?」

 問い詰める八乙女くんの顔を見て、恭介くんは「ん?」と首を傾げた。

「何って、また若菜さんが嫌がらせを受けたら大変だから、帰り送ってあげようかって話をしただけだけど?」

 ケロリとした顔で言う恭介くん。

「はあ?」

「だって一人だと危ないだろ。また誰かが嫌がらせしてくるかもしれないし」

 わざとらしく肩をすくめる恭介くん。

「でも、若菜さんは男子が苦手なんだよ。お前がいたら迷惑だろ」

 イライラした様子の八乙女くんに、恭介くんはあっけらかんとした顔で答える。

「でも、危険だろ?」

 八乙女くんは私の方にクルリと向き直った。

「分かった。じゃあこれから、俺が若菜さんの帰りに送るよ」

 え、ええ??

「こうなったのも、元はと言うと俺のせいだし」

 そつか。八乙女くんたら、責任を感じてるんだ。

 でも、何だか悪いな。

 八乙女くんには、他に好きな子がいるのに。

「で、でも……」

「それとも、恭介と一緒の方が良かった?」

 強い口調で言う八乙女くん。慌てて否定する。

「う、ううん、そういう訳じゃ」

「じゃあ、決まりね」

 強引に決めてしまう八乙女くん。

 えっ!?

「それじゃ、放課後ね」

 手を振り去っていく八乙女くん。

 ええっ!?

 この思わぬ展開に、私は口をパクパクすることしかできなかった。

 どうしよう。

 八乙女くんと一緒に帰るだなんて!

 いや、嫌じゃないけど、どっちかというと嬉しいけど……どんな顔したらいいの!?