「若菜っ!」

 そこへサエちゃんと、なぜか恭介くんも走ってくる。

「おいっ、お前ら、こんな所で何やってんだ!」

 恭介くんが一喝すると、雪乃ちゃん達はそそくさと逃げるように去っていく。

「な、何でもないっ」
「行こ行こ!」

 ヘナヘナとその場に座りこんだ私を、サエちゃんが助け起こしてくれる。

「大丈夫? 何かヤバそうだったからどうしようって思ってたら、たまたま近くにガタイのいい男子が二人いたから着いてきてもらっちゃった」

 どうやら私を心配してくれたサエちゃんは、たまたま近くにいた八乙女くんと恭介くんに声をかけて一緒に見に来てくれたみたい。

 た、助かった……。

「うん、大丈夫。ありがと……」

 恭介くんが腰に手を当てて雪乃さんたちの方を見やる。

「全く、あいつら八乙女のファンだぜ。きっと最近、八乙女が若菜さんと仲がいいから嫉妬してるんだ」

「そうなの?」

 キョトンとする八乙女くん。

 どうやら八乙女くん、雪乃ちゃんたちが八乙女くんのファンだってことに気づいてすらいなかったみたい。ど、鈍感……。

「私聞いたんだけど、雪乃ちゃんって、中学校の時は女子バスケ部のレギュラーだったんだって。それが、八乙女くんに近づくために高校からは女バスを辞めてマネージャーになったって」

 サエちゃんが教えてくれる。

「そうだったんだ」

 それを聞くと、何だかちょっと可哀想なような。

「それにしても許せないよな。やり方が卑劣だぜ。大丈夫だった? 若菜さん」

 と、これは恭介くん。

「うん、大丈夫。何もされてない」

「そう、それならいいけど」

 八乙女くんがサラリと私の髪に触れる。

 とくん、と心臓が鳴った。

「ごめんね。今度からは、俺が何があっても若菜さんを守るから」

 真剣な瞳。

 その真っ直ぐな眼差しに、心の芯までとろけそうになる。

「う……うん」

 どうしたんだろ。真っ直ぐに八乙女くんの目を見れない。

 胸の鼓動が止まらなくて、体が火照ったみたいに熱い。

 何これ。

 どうしちゃったんだろ、私。