私はスニーカーの砂を払うと、グラウンドへと向かった。

 うう、靴の中がジャリジャリする……。

 そして体育の授業が始まった。

「キャーッ、カッコイイ!」
「八乙女くーん!」

 今日の授業は、100m走。

 風を切るようにして爽やかに走る八乙女くんに、黄色い歓声が飛ぶ。

「見て、クラスで一位だって。本当、人気あるよねー、若菜の旦那」

「だから、旦那じゃないってば」

 サエちゃんにからかわれる。

 もう、ただでさえ変なウワサ立てられてるのに、やめてよね。

 すると、一緒に体育の授業を受けていた隣のクラスの女子たちが、ヒソヒソとこちらを見てウワサ話をし始めた。

「ほら、あの子だよ、あの子」
「わざわざバスケ部の応援にも来てたんだって?」
「休日も八乙女くんのいる所にいつも現れるらしいよ」
「やだ、大人しそうな顔して、ストーカーみたい」

 ええっ、付き合ってるっていうウワサならまだしも――私がストーカーってことになってる!?

 このウワサには、隣にいたサエちゃんも怒りだす。

「ちょっと、何なのあのウワサ。ひとこと言ってきてやろうかな」

「い、いいよ、大丈夫だよ」

 そんなことして、隣のクラスの女子ともめたりしたら大変!

「でも……」

「あ、ほら、もうすぐ100m走の順番くるよ」

 私が言ってすぐに、サエちゃんは100m走の順番が来て、走り出す。

 サエちゃんは一位でゴールに着いた。
 サエちゃんってば、運動部でもないのに足が速いんだ。

 いあなあ。サエちゃんは美人でしっかりしてて頭も良いし、スポーツもできる。

 なんの取り柄もない私とは大違い。

 はあ。

 溜息をつきながら、スタートラインに立つ。

「位置について、よーい……」

 先生の合図で、100m走を走る。
 予想した通り、私はダントツでビリだ。

「はぁっ、はあっ……」

 走り終わってヘトヘトになっている私の所へ、サエちゃんが駆けてくる。

「若菜、おつかれー」

「あ、おつかれ……」

 私がサエちゃんの元へ行こうと走り出したその瞬間、誰かの足が飛んできて、私はそれにに引っかかり、ガクッつまずいてしまった。

 えっ……!?

 気づいた時には、私は顔面からずっこけ、地面に転がっていた。