わああああああっ!

 悲鳴のような歓声が湧き上がる。

「今の見た!?」
「見た見た! すごいオシャレなノールックパス!」
「すごいよねー! 私、絶対シュート打つかと思ったもん!」

 隣にいたバスケ部の女の子たちが盛り上がる。

 どうやらバスケ部の子から見ても、やっぱり八乙女くんはくんはすごかったらしい。だよね、素人が見ても上手いって分かるんだから。

「ほら、八乙女くん、こっち歩いてくる」

 私があっけに取られていると、サエちゃんが私の肩をバンバンと叩いた。

 ハッとコートの上を見ると、恭介くんと肩を組んだ八乙女くんがこちらに歩いてくる。

「手、振りなよ」

「えぇっ!」

 サエちゃんに言われて、申し訳ていどに小さく手を振る。

 すると八乙女くんが顔を上げた。

 ドキンと心臓が鳴る。

 あ、八乙女くん、こっち見てくれた。

 八乙女くんは私の方を見て少し恥ずかしそうにはにかむと、こちらに小さく手を挙げ手を振ってくれた。

 わわわわわっ!

 可愛い!

 男の人に可愛いって言うのも変かもしれないけど、胸の中がきゅうんってして、可愛い以外の言葉が見つからなかった。

「はー……」

 胸の中から熱い息を吐き出す。

 すごいな。

 やっぱり八乙女くんは王子様だぁ。

 私がぼんやりしながら八乙女くんを目で追っていると、ベンチからタオルを持ったポニーテールの女子が飛び出してきた。

 あ、あの子、知ってる。

 バスケ部のマネージャー、雪乃(ゆきの)ちゃんだ。

 雪乃ちゃんは隣のクラスの女子なんだけど、背が高くてスタイルもいいし、目鼻立ちもはっきりしてて、すごく美人で目立つから、私も顔だけは知ってる。

 ベンチから出てきた美人マネージャーは、一瞬こちらをキッとにらむと、笑顔で早乙女くんに向かって走っていった。

「何あれ。怖っ!」

 サエちゃんがボソリとつぶやく。

 どうやらにらまれたと思ったのは私の勘違いじゃなかったみたい。