家に帰って、ゴロンとベッドに横になる。
 
 “それってデートじゃん!”
 “八乙女くん、絶対に若菜に気があると思う!”
 “告白されたらどうするの?”

「あーーもう!」

 家に帰ってからも、サエちゃんの言葉が頭から離れない。

 枕をかかえて身もだえて、ゴロゴロ転がる。

 そんなこと言われたら、八乙女くんのこと、意識しちゃうじゃんか!

 そりゃ、八乙女くんは良い人だし、気が合うし、現実の男子にしては珍しく、話してても嫌じゃない。

 特別な存在といえばそうなのかもしれないけど――。

 どうしよう。ないとは思うけど、万が一告白されたら、私、どうしよう。

 もし告白されたら。

 好きだなんて言われたら……。

 頭の中に、色白の綺麗な横顔や優しい瞳、可愛いものについて熱心に語る、すこし低めの声が次々に浮かんで消える。

 もし付き合ったら、どういうことをするんだろう。

 デート? でも二人でお出かけはもうしてるし……手を繋いだり、キスしたりだとか?

 や……八乙女くんとキス!?

 ひゃ……ひゃあっ!

 ゴロゴロとベッドを転がる。

「――って、ないない! そんなこと!」

 考えただけで、顔が火照ったように熱くなっちゃう。

 ぎゅうっと枕を抱きしめる。

 もう、なんて事考えてるの!? 私ってば!

 私はブンブンと頭を振ってその妄想をかき消した。

 やっぱりありえないよ、そんなこと。

 クラスの王子様、八乙女くんが私のことを好きだなんて!