「しかも相手はあの八乙女くん。私てっきり、八乙女くんは恭介くんとデキてるのかと思ってたわ!」

「な、なんで八乙女くんが恭介くんと!?」

 サエちゃんは、恭介くんと二人で仲良くふざけ合ってる八乙女くんをチラリと見た。

「ほらあの二人、いっつもベタベタしてるしさ!」

「あのね……」

 サエちゃんがBL――男の子同士の恋愛ものを好んでるのは知ってたけど、まさかクラスメイトでそんな妄想をしてただなんて。

「っていうか何度も言うけど、私と八乙女くん、付き合ってないから!」

「でも、もし告白されたら付き合うんでしょ?」

 サエちゃんが無邪気に聞いてくる。

「えっ?」

 八乙女くんが、私に告白!?

「そそ、そんなことあるわけないじゃん!」

 だけどサエちゃんは、ガッチリと私の手をにぎる。

「若菜、彼氏ができてもたまには私と一緒に遊んでね。次は一緒にイベントに行こう!」

「あの、だから違うって……」

「そうだ。いっそのこと、八乙女くんにもコスプレしてもらって一緒にイベントに来れば良くない?」

 ナイスアイディア、とばかりにサエちゃんが提案する。

「はあ!?」

「八乙女くん、二次元ぽいからコスプレ似合いそう。王子様キャラとか、女装もイケそう!」

 キャッキャと盛り上がるサエちゃん。

 八乙女くんの王子様コスプレに女装。うーん、似合いそう――じゃなくて!

 もう、私たち、別に付き合ってるわけじゃないってば!