実を言うと……私もサエちゃんが言うようなことを全く考えないわけじゃない。

 これってデートじゃないかなあ、とか。八乙女くんはどういうつもりで私のこと誘ってるのかなあとか。でも――。

「でも、分かんないよ。告白されたわけでもないし、向こうはただ単に気の合う友達と思ってるのかも……」

 私はチラリと八乙女くんを見た。

 八乙女くんは、同じく運動部の活発そうなクラスメイトたちと楽しそうな話している。

 いつもそう。八乙女くんは、クラスの中心のキラキラした女子や男子に囲まれてる。

 私とは違う世界に住む人間って感じ。

 どう考えても、八乙女くんが私みたいに地味な女子を好きになるなんてありえないよ。

 でもサエちゃんは、もうすっかりその気になって盛り上がってる。

「いやー、若菜もついに彼氏持ちかぁ」

「だから、違うってば」

 私が否定しても、サエちゃんは全然聞く耳を持たない。