「えーっ、ウソぉ!」

 女の子たちが目を丸くする。
 私は慌てて訂正した。

「うそうそ。たまたま会っただけだよ」

 ホッとしたように笑う女子たち。

「なーんだ、そっか」
「だよねー」
「それじゃあ私たち、これから予定あるから」

 去っていくクラスメイトたちの背中に大きく手を振る。

「うん、バイバイ」

 ふう、良かった。変なウワサとか立てられたら大変だもんね。

 ホッと安堵の息を吐く。

 チラリと横を見ると、八乙女くんは平然とした顔をしてる。

 全く、八乙女くんたらどういうつもりであんなこと言うのかな。

 すると急に八乙女くんがクルリと振り返る。

「若菜さん――」

「えっ、な、何!?」

「そろそろ店を出よっか」

「あ……うん」

 二人で並んで店を出る。

 だけど、何となくソワソワしてしまう。

 他にも誰かクラスメイトに見られてるんじゃないかと思うとなんだか落ち着かない。

「それじゃあ今日はありがとう」

 駅の辺りで八乙女くんに手を振る。

「大丈夫? 送っていこうか?」

 心配そうにしてくれる八乙女くんの提案を、私は断った。

「う、ううん、大丈夫、ここで!」

 だってこれ以上誰かに見られたら大変だもん。

「でも危ないよ、女の子一人で。俺もついて行く」

 だけど結局、八乙女くんは私を家まで送ってくれて――。

 八乙女くん、乙女趣味なのに、意外と強引なところあるよなあ。

「それじゃ、ここ、私の家だから。今日はありがとう」

 私が髪につけた白い花のピンを見せると、八乙女くんは口の端を少し上げた。

「うん、気をつけてね」