「あ、これだね」

 映画館に着き、八乙女くんが今話題の若手女優とイケメン俳優が並んだポスターを指さす。

 わあっ、ステキなポスター。

 いかにも泣ける純愛映画って感じ。

 辺りを見回すと、若いカップルがたくさんいて、なんだか落ち着かない。

「それじゃ、そろそろ入ろうか」

「うん」

 私たちは、飲み物を買って映画館の中に入った。

 二人で見る映画『四月、最後の桜と最後の恋』は、いわゆる難病もので、最後にヒロインが病気で死んじゃう悲しい映画。

 泣けると評判だって、SNSでも話題で、ネットでもテレビでも取り上げられてたっけ。

 それにしても――映画館の前でも思ったけど、映画館に入ると、周りは本当に若いカップルだらけ。何だか落ち着かない。

「わあ、カップルだらけ」

 私があんぐりと口を開けていると、八乙女くんはクスリと笑った。

「そうだね、一人で見に来なくて良かった」

「……だね」

 すると私たちの横を女の子二人組が通り過ぎる。

「うわー、カップルだらけ」
「ほんとだー。かっこいい彼氏。いいなー」

 あれ、今の子たち、もしかして私たちの方を見て言った?